2日、じいちゃんに逢うべく両親と病院へ行った。
じいちゃんは個室で人工呼吸器をつけながら意識朦朧とした中、闘っていた。
声をかけてもわからず、なにもしゃべれず・・・。
ベッドサイドモニタの音だけが聞こえる個室で何時間か横でじいちゃんを見ていた。
たまに寝返りを打ちたそうにするじいちゃん。
両親が、じいちゃんの手を握りながら声をかけ うんうんとうなづく。
僕はその時なんで冷静でいられるのかわからずどうしたらいいのかもわからなかった。
苦しいんだろうな・・・ がんばれじいちゃん・・・
僕はじいちゃんの骨と皮しかない手を握った。
たまにグッ・・・と力が入り僕も握り返す。
「じいちゃん、大輔だよ」
そう言うとじいちゃんは、見えてないだろうけど
親指と人差し指だけを何度も何度もギュと握り
うなづいてくれたように見えた。
一瞬、泣きそうになった。頑張ってこらえた。
じいちゃんは少し寝ているようにも感じた。
病室から出たくなかったが
「そろそろいこうか」
という親の言葉でその場を後にした。
母ちゃんは病室から出たらハンカチで顔をふさぎ込んでいた。
なんて強いんだろうと思った。
その夜、僕は小学校時代の仲間の集まりがあり
雪がフワーっと降る中、家から友達の家まで歩いた。
子供の頃住んでいた家の前や遊んでいた公園を通り
ボーっとしながら ただ歩いた。
久々に逢う友達には子供ができていて、なつかし話で盛り上がった。
翌日の3日、起きたら両親はおらず、雪がパタリと止んでいた。
昼過ぎ、じいちゃんが息を引き取ったとのメールが入った。
じいちゃんの好きだったタバコを吸いに外へ出る。
すると、空からゆっくりと雪が降ってきた。
白い吐息とタバコのケムリで雪の降る空がやけに白くに見えた。
数時間後、父ちゃんに駅まで送ってもらい新幹線で東京へ戻る。
1人だったからか全然実感がなかったのか
東京の家へ帰り音楽を聴いて初めて泣いた。
戦争へ行って帰ってきてくれたじいちゃん。
子供の頃、戦争の話をしてくれたじいちゃん。
いっつも笑ってくれてたじいちゃん。
タバコで入院したのに病院でタバコを吸ってたじいちゃん。
あなたがいなければ、いまの僕はありませんでした。
絶対に忘れず、僕は頑張ります。
ゆっくり休んでください。
ありがとう ごんじいちゃん。